祈りの旅

日本のどこかでアルゼンチンタンゴを踊っている女のブログです。

内出血

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11月らしからぬ暑さが続きますが、少しずつ紅葉しています。

まるで身体の内側から、血が滲み出すみたいに。

…だなんて考えるのは、人間だけ。

唐紅色の葉っぱが、用水路に落ちて溜まり流れていくのを、生々しいものを見てしまったように目を逸らしたくなるのも、

人間だけ。

酷いことなど何もないのに。せっかくこんな、綺麗な色に乾いて落ちたのに。

……だって、乾いているほうが、よく燃えるから。

と尚、血や火が見たい、寂しい人間がひとり。

 

***

 

気持ち良く踊れたから。気持ちの良い時間を、あなたと過ごしてしまったから。いままでの大切だった思い出を、あなたとすっかり共有して、わたしたち抱き合ったのだと、つい錯覚してしまった。

その思い出とは、本当のわたしの思い出ではない。あなたも本当の登場人物では、無い。

最初から。何も共有など、していなかったのだから。

コルティナがふたたび鳴ったなら、さようなら。次に会うときは、ふたり全く、互いの記憶を失くして、また会いましょう。

微笑みながら、かわしていきたい。それなのに、どうしてこんなに痛がるのか。

身体のどこかから、血はぬらぬら光りながら滴り落ちる。誰とも混ざり合うことのない、生温かい川が、音もなく流れている。