祈りの旅

日本のどこかでアルゼンチンタンゴを踊っている女のブログです。

わたしのさみしい犬

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晴れた昼も、そのまま滑らかに下降する夕暮れも、一様に青さを持っている。空が青いから青いのでは無い。容器に入れた水のように、青が充満して、おかげで思考が人にまで知られない。おかげで誰の心も、わからない。

 

仕事をしているとき。踊り場で誘いを待っているとき。わたしの中のさみしい犬が、ちがう世界の冬の海を、冷たい浜辺に座って眺めている。ただただ、ずっと、ずっと、海の向こうを見つめている。細い尾を垂らして。

わたしのかなしい、黒い犬。暗い海の向こう、一筋をひしと信じる、かなしい犬。

ああ、かわいそうな子。もっとあたたかい場所で、おいしいご飯をもらって、撫でてもらいなさい……………

現実、はたから見たら、わたしはただの陰気な哀れな小さく醜い女。誰にも関われず、一生をこのまま終えそうだ。さようなら。通り過ぎていった時よ。眼裏から溢れた粒子よ。おそろしき反射よ。ちら、ちらと確かに見えていたような、あなた。わたし、覚えていました。