サキマスヨウニ。サキマスヨウニ。
十月桜が、ちらほらと花を付けていました。
急に空気が、冷たくなりました。
きっと、空が、今日は高かったでしょう。そんな空気でした。でも今日は、お空をあんまり、見ないで歩いてきてしまった。
今日も、わたしが居ることができるミロンガがあって、とてもありがたい。
どうしてこう、次から次にわたしは、感情が変わってしまうのだろう。
本当にそれは、簡単なことで。それでもどうも難しく、複雑な作りの扉を見るように。
でも風のように、シンプルなこと。
あっという間に、あたたかい気持ちになったり。たちまちにつまらなくなってしまったり。
それでも常に、音楽は続いていく。
どうして、こんなか細い二本の足でなんて、踊っているんでしょう。
もっと太い太いところを使って踊りたい。心が急いで、後から身体が追ってきて。
脚が邪魔なんです。もっと、時間を、音楽を、細かく細かく刻んで……もっとその瞬間を、選びたい。
木が、花が、みな同じ、約束された姿に辿り着くように。
自然に約束された、奇跡のような当たり前の瞬間を、もっと着地点を選びたい。
音楽を聴くのに夢中で、着地点を選ぶのに夢中で、ついあなたのことを疎かにしてしまう。
ひとりで踊っちゃって、ごめんなさい。もっとふたりで、踊りたいわねえ…………
もっと、もっと、あなたに優しくしたい気持ちが咲いてほしい。
華々しい音楽のもとに、あなたをいとおしむ心が、わたしに咲きますように。
咲きますように。咲きますように………と、踊っているのですよ………。
誘われなくて、しゅんと座っている時、ふと昔のひとの笑顔が思い出された。
最近、似た人を見つけたのです。だから思い出されたのですけど。
ただそれだけ。思い出されただけで、涙ぐんでしまった。
過ぎていく音楽の中に、これまでの全てが、そしてこれからの全てが内包されているような気がするのです。
そう目眩して、ぼぉーっと時間が過ぎていく。
……周りの人からよく、アナタはつまらない顔してますネ。とか、面白そうじゃない顔してますね。とか、ツカレチャッタノ?なんて言われます。今日も言われました。
そうぢゃないんです。悲しい女だから。さみしい女だから。考えることが、思うことがたくさんあって、むっーとか、ぼわー。とした顔になっちゃうんですよ…………。
こんなにも醜く、ちいさなわたしを。妖精のようによろこばしてください。そう願うだけ。願いました。音楽は通り過ぎていきました。
わたしは傲慢ですね。でも願ってしまうのです。残念な女です。それでもわたしの心が浅いばかりに、思ってしまうのです。「もっとわたしを、よろこばしてください。」と。
あなたと踊りたかった。あなたはどうでしたか?同じ気持ちなら、とってもうれしいです。ここに降り注いだ音楽と同じくらいきらきらとした「ああ、なんて幸いでしょう。」という言葉を差しあげたい。
あなたにあげる。
あなたに差しあげる。