ファースト
良くない夢を見た。わたしったら、おかしな時間にうとうとしてしまったから……。
お母さん。お母さん……と半狂乱になる。ああもう時間がないの。このままではひとりで部屋にいられない。まるでしんでしまいそうなの。このままでは………………
急いで顔を洗ってお顔を整えて、ミロンガに行きました。
ああ、よかった。こんなひどく乱れた心の日に躍りに行けるところがあって………夜に逃げていけるところがあって…………。どうして夜にどこかへ逃げたいなんて思うことがあるだろうに。
会場へ着き、ひとびとに踊っていただく。
どの瞬間に足を着こうか、たくさん悩ませてくれて、ありがとう。わたしたちは音楽のもとに隷属し、水のようなそぶりです。二本の足が、胴体のただの付属品になる。踊りましょう。親愛という心で。探させてください。あなたの身体の真ん中を。真ん中…真ん中……いいえ、もっと、もっと隙間のようなところを……目指させてください。盲人のわたしが、ひとすじの光を求めるように。
口の中にウツロが具現化する。それがうっかり出ていって他人に指を刺されないのは、音楽が鳴り響いて、人々が踊っているからでした。
ありがとう、音楽。ありがとう。
そう、たとえば悲哀で。あるときはほほえみで。またある時はため息で。
わたしたち、踊っているのですね。
一心に、祈るように。音楽よ、降りかかってください。
すなおにさせてください。生きるのに拙く、薄弱でどうしようもないこのわたしを。
踊りながら一心に、一心に、祈っているのです。音楽よ。踊れるひとたち全てに生き生きと、降りかかってください。
こんなふうに、アルゼンチンタンゴを踊ったときに感じたことを書いていきます。たぶん同じことの繰り返しを、日々書くかも知れません。
人が見たらつまらないメモ帳です。でも、わたしがわたしを忘れないようにし、そしてわたしの心をきれいにするための、ノートなのです。そうしたいのです。